2012年1月16日月曜日

民話 艶ばなし色ばなし 笑いばなし

むかし、むかし、ある長屋のはじに鍛冶屋が住んでおったそうな。
そこの亭主は毎日、毎日トンテンカン、トンテンカンと鉈をつくっておった。
ところが、そこのかかあと隣の亭主がいつの頃かうまくいっておったそうな。
かかあが亭主の仕事中、土間の戸口さタライをもっていって、尻を戸の節目さむけて、足を洗っておった
そうすると、節穴から隣の亭主が品物をだしてうまくやっておったそうじゃ。
その間は亭主がかかあに何をいいつけても、ちいともうごうともせん
まるで聞こえんように足をタライにつけておる。
おかしいと思った亭主は、かかあがタライを片付けたあとすぐに、節穴を見てみると
ちじれた毛やら、白い汁がついておる。
あくる日、亭主はひっつかまえてやろうとタライを戸口さもっていって、トンテンカン、トンテンカンといいながら
かかあをまねて、湯さ、ばしゃ、ばしゃと鳴らして足を洗う音をたてておった
するとやっぱり隣の亭主、トンテンカン、トンテンカンと拍子にあわせて、でっかい松茸みたいなものを出したそうな。
やんわり手で握っていると、節穴のむこうから
『尻だせ、尻だせ」
「このやろう」と、亭主は松茸をぎゅうぎゅうつかんで
「おい、かかあ、化け物をつかめーだから、今日出来たての鉈をもってこお、試し切りにしてやる。」と叫んだ。
「これは困ったもんだ、鉈はどこいったかいのお」と
とぼけて家の中さ、ぐるぐる探しまっていたそうな。戸の節穴の向こうでは、隣の亭主試し切りと聞いて度肝をぬかした。
己の松茸にぎって逃げるべしと引っぱるし、こっちの亭主はにがすまいとぎゅうぎゅう締め付けるし
かかあはこまってしもうた。
「なにぐずぐずしてるだ、どれ俺が持ってくっから、お前ここさきて、これ押さえてろ」と
亭主が言うなり、かかあは
「はい」というなりすばやくスリコギを着物の中へ隠し持ってきて隣の亭主の松茸はなして、
そこへスリコギをさしこみ、ぎっちりにぎっていたそうじゃ。
鉈を持ってきた亭主が
「この、くされ松茸があー」と、すっぱり切ってみると、スリコギじゃった。
亭主はびっくりして、???が松茸にばけた話はきいたことがあるぞも、スリコギに化ける話はきいたことがねえ。」
このことがあってからかかあは、戸口で足を洗うのをやめ、
かべに尻むけて洗うようになったそうじゃ。

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