2020年5月24日日曜日

5月24日、産経抄

そう、ハンコが今話題やね、この間韓国の新聞で日本のハンコ文化を
IT時代に取り残される文化なぞと揶揄してたけど、日本人からハンコを
なくせばやはり何か気が抜ける、気迫の一つがなくなる、
なにせ日本人には「血判」なる習慣がある。

5月24日

あるものに関するクイズを一つ。
高価なものは金や七色の石でできており、安価なものは1円の値打ちもない。
『三国志』では、賊の手に落ちないよう都の女官がこれを抱いて井戸に身を投げ、
後に呉の孫堅がこれを拾った。

▼答えは、印章(はんこ)である。
日本最古のものは「漢委奴国王」と刻まれた純金製の逸品、孫堅が手に入れたのは
「伝国の玉璽」という中国正統王朝の証しだった。
宅配物の受け取りには三文判を押し、拇印(ぼいん)や実印、消印など
「はんこの国」で培われた言葉の数々も、耳になじみ深い。

▼聞けば、行政手続きや契約で判を押すのは、日本や韓国、台湾など少数派らしい。
いまや希少種となった「はんこ文化」が、長引くウイルス禍の中で「罪人」の
烙印(らくいん)を押されている。テレワークの障害になっているとの批判である。

▼契約書や決裁文書に判を押すため、緊急事態宣言の中を出勤した人は多かったと
いう。
ビジネスの現場では電子押印や電子署名の導入が加速し、経済界からは
「はんこは美術品として残せばいい」と身も蓋もない声も聞こえてくる。

▼押印のデジタル化で事が円滑に運ぶのはいい。
さりとて不慣れなお年寄りら「IT弱者」を置き去りにした議論の加速は
いかがなものか。
給付金のオンライン申請では役所の混乱という質の悪い喜劇も見た。
決意のほどを示す手段として、はんこが重きを担った歴史も忘れてはなるまい。

▼〈納得と言ふにはあらず人生の時間惜しみて印鑑を押す〉棚田浩一郎。
不動産の売り買いや婚姻届など人生の岐路を前に、決断をはんこに委ねてきた
日本文化の歩みがある。ウイルス禍の時代にまず惜しむべきは命だが、
全ての決断をクリック一つに託すのも味気ない。何より落ち着かない。

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