2012年1月6日金曜日

艶ばなし

むかし、ある村に30になったばかりの綺麗な後家さんがおったそうな。
顔立ちは上品で、なんでも高貴の血をひいているちゅうことで
下の冗談なんぞ、耳にすると顔を赤らめるどころか、きつい目でにらみ返していたそうじゃ。
ある夜、村でも1,2を争う好きものの茂助が、この後家さんに夜這いをかけた。
寝間の障子をそうっと開け,定石どうり、足元の布団から顔を入れて、そろり、そろりと這いいっていくと
後家さん、気配を感じて
「誰じゃ、何をする。」と、きつい声でゆうたそうな。
「わしじゃ、わしじゃ,茂助じゃ、頼むから大きな声を立てんでくれんかいの、隣にきこえる。」
「すぐに出ていっとくれ、大きな声で助けをよぶぞ。」と
言うが早いか、下腹に力をいれて、悲鳴を上げかけよった。茂助はあわてて
エイヤットと目の前にあった、下の口を両の手でおさえた。
そのはずみに、二本の親指が、スッポリ穴にいってしもうただ。後家さんの悲鳴は、
「ハアー,ハアー、ハアー」と力ない声になって、腰がピクン、ピクンと動いたそうな
茂助は一物をあてがって,グイッと腰をいれながら
「はあ、やっぱり女は二つの口を持っているんもんじゃな」
しばらくして、後家さんはとても女の声とは思えんような
『ウォー、ウォー、」とけだものような、野太いよがり声をあげだしたそうな。
茂助は上の口もふさごうとしたが、顔を激しく左右に振るので、こんどばっかりはふさぎ様もねえ。
やがて隣のおやじが、その声をききつけてやってき、何事かと窓越しに中を見ると、
茂助の姿がウッスラ見える。
「おーい、茂助どん、今けだものの声がしたようじゃが、性悪る狼でも紛れこんどるのかなあ。」
「ああ、そうじゃい、後家さんの家へ狼がいるところ見たで、わしが退治してやろう思うて
今、懲らしめているところじゃ」
「ほんじゃ、わしも手助けしようかいの。」
「いや、いや、それには及ばん、もうすぐ片がつくわい。」
やがて、茂助の腰のしたで
「しぬう、しぬう、」と野太いこえ。窓の外にいた隣の親父は安心した顔で
「やんれ、やんれ、退治ができたようじゃな、茂助どん後家さんにええ功徳をしなすったのお」

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